「味わい深い作品」というのが最も適当な表現だと思う。見終わった後のなんともいえない心地よい余韻。後で振り返ってみると、観ているときはとくになんでもなかった様々なシーンがライ・クーダーの情緒的なスライドギターの音とともに鮮明によみがえり、また違った印象を刻みつけ、また観たいと強く思わせるオーラを持っている。実はすごい映画を観たんじゃないだろうかと、後になってじわじわと気づき始めた。前評判通り、かなりの名作だった。
この映画のすばらしいところは、登場人物の微妙な心情を明示的な台詞ではなく、映像で語らせる手法の巧みさにある。作品の中の1シーン1シーンに重要な意味があり、表される風景や舞台装置、アイテム、それらのコンビネーションの中に非常に多くの情報が詰め込まれている。このことが、見終わった後も後引く味わい深さの源泉となっているのだと思う。
特に印象に残っているシーンは2つ。
一つは、4年ぶりに再会した父子が家路を道の両側に離れて歩く場面。二人は一言もしゃべらず、ただひたすら相手の動作を真似しつつ歩き続ける。お互いに相手に歩み寄りたい気持ちはあるが、まだ完全には打ち解けられない。そういった微妙な心境が、このシーンでは完璧に表現されている。
二つ目は、捜し求めた妻とマジックミラー越しに再開するシーン。相手を愛しすぎて、お互いを縛りつけ、嫉妬しあうことでしかその感情を表現できなかった不器用な二人。歩み寄りたくても、近寄れば近寄るほど相手を傷つけてしまうというジレンマ。そんな二人がマジックミラー越しには本音を言い合うことが出来た。ただし自分ではない第三者の話として。お互い近くにいるのに相手のことを見ることは出来ず、ミラーをはさんで片方に光がともれば相手の姿が消え、自分自身が鏡に映り出す。詳しくは映画を観て感じ取ることが一番だが、あの状況の彼らの心境を表現するのに、マジックミラーという装置は的確すぎるほど的確だった。
この他にも、不器用な人間達の不器用な(だからこそリアルで温かな)心の交流が全編を通して徹底的に作りこまれた映像表現で語られ、それでいてあざとさは感じない、とても雰囲気のいい映画に仕上がっていた。
主演陣はどれも甲乙付けがたい味があったが、やっぱり子役のハンター・カーソンは出色のうまさ。他の俳優を食っちゃってる感があった。あんなにうまい子役は今のところ他に一人も知らない。
次は同監督の「ベルリン・天使の詩」も観て見たい。
<関連商品>




コメント (2)
I’m very interested in topics like that, but this one sounds especially truthful, and I really trust the source where it came from. Sooner or later it was going to come out and it finally did!
投稿者: jonundead | 2008年04月07日 04:34
日時: 2008年04月07日 04:34
Yes, I do think your opinion is righteous. (So do lots of people). Luckily majority of people are intelligent :).
投稿者: Darren | 2008年04月09日 20:18
日時: 2008年04月09日 20:18